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ミニ情報通信

平成30年度東北ブロック特別セミナーが開催されました。

 去る12月3日(月)午後1時20分から、東京エレクトロンホール宮城601大会議室(仙台市青葉区)において、標記セミナーが開催されました。
 このセミナーは、全重協が厚生労働省から受託した「障害者に対する差別禁止及び合理的配慮に係るノウハウ普及・対応支援事業」の一環として開催されたものです。
 当日は、まず最初に、全重協の栗原会長から開会のあいさつがあり、1)最近は、全重協の会員企業においても精神障害者の雇用が増えている、2)障害者は合理的配慮をすれば必ず企業の戦力になる、3)このことは、11月に開催された衆議院厚生労働委員会の参考人質疑においても申し上げたといった話がありました。

 栗原会長のあいさつの後は、全重協の会員企業である中電ウイング株式会社専務取締役の三澤弘一様から「障害者が生き生きと働く職場づくりについて」と題して講演がありました。
 三澤様からは、重度身体障害者や知的障害者の雇用の促進という特例子会社としての同社の設立経緯について説明があった他、1)同社では、身体、知的、精神それぞれの障害特性を考慮して業務を付与している、2)具体的には、身体障害者については、設備等に配慮し、専門性の高い業務に就いてもらっている、3)知的障害者については、指導者によるOJTを通じて、軽微な定型業務をやってもらっている、4)精神障害者については、同じく指導者を配置して多様な事務補助業務をやってもらっている、5)障害者の就労を安定させるには、「休憩スペースの確保や業務内容の見える化といった環境面の整備」、「SPISの活用や不調時の対応といった本人へのサポート」、「周囲の理解」、「生活基盤の確立」及び「外部支援機関との連携」の5つがポイントとなる、6)障害者の育成には「能力、適性を最大限活かすこと」、「自信を付けさせること」、「仲間意識の醸成」、「配慮しすぎないこと」の4つがポイントとなる、7)今後は、身体、知的、精神といった障害種別によって職域を限定せず、個々の障害者の能力、適性を踏まえた配属とすることが課題、また、8)定型業務だけでなく、非定型業務や調整業務を付与することも課題といったお話がありました(三澤様のお話の詳細はこちらの資料をご覧下さい)。

 三澤様の講演の後は、「社内で障害者雇用を進めるノウハウ」についてパネルディスカッションが行われました。
 このパネルディスカッションには、講演を行っていただいた三澤様の他、全重協の役員を務めている日本パーソネルセンター株式会社常務取締役の大本正巳様と株式会社ベネッセビジネスメイト代表取締役社長の櫻田満志様にパネリストとしてご参加いただくとともに、地元宮城の一般社団法人思箭・就労相談支援事業おもいやサポート相談員兼ジョブコーチの荒井俊行様にもご参加いただきました。
 パネルディスカッションは、全重協東北ブロック長の加藤幹夫様(株式会社新陽ランドリー代表取締役)がコーディネーターとなって進められましたが、まず大本様からは、1)障害者が就労するためには、「健康管理の力」、「日常生活を管理する力」、「職業生活を続けていく力」及び「職業適性」の4つが必要、2)障害者の採用は実習とトライアル雇用を通じて行っている、3)ジョブコーチが日報を通じて障害者の気分、体調、業務の感度等を把握している、4)必要に応じて面談も実施している、5)障害者の入社3年目まで、ジョブコーチが保護者と情報交換をしている、6)障害者にメモを取らせ、自分専用のマニュアルを作らせるようにしているといったお話がありました(大本様のお話の詳細はこちらの資料をご覧下さい)。
 また、櫻田様からは、1)ベネッセビジネスメイトは、その事業領域において市場競争力を持つ自立した会社となり、ベネッセグループや社会にとってなくてはならない存在となることを目指している、2)障害者の雇用拡大、定着に向けて、「障害のある社員が戦力となる業務の開拓・変革」、「社員のやる気が出る制度・体制の構築」、「障害者が長く働きやすい環境・風土づくり」を行っている、3)受託業務の拡大に向けて、外注している業務、社内で派遣社員やアルバイトがやっている業務を切り出している、また、4)専門性の低い業務、ノンコア業務を受託している、5)工程を見直し、個々の障害者の特性に応じて工程ごとに担当を分けている、6)同じく工程を見直し、シンプルにして難易度を下げて切り出している、7)仕事のやり方、体制を見直すことで、障害者ができる業務を増やしている、その上で、8)切り出した業務に合う障害者を採用している、9)障害者の生活上の困り事に対応するため、支援機関、医療機関、学校、家庭と連携している、10)業務をうまく進めるために、「見える化の推進」や「就労支援機器の導入」、「いつでも相談できる体制の整備」を行っているといったお話がありました(櫻田様のお話の詳細はこちらの資料をご覧下さい)。
 さらに、荒井様からは、企業サポート(企業内における相談業務)、事業所サポート(福祉事業所における就労相談)、個人向けサポート(就労に関わる相談援助)といった就労相談事業や、今年度から新たに障害福祉サービスとして始まった就労定着支援事業について説明があった他、計画相談を通じて福祉サービスとの連携をサポートしているので、企業も是非利用してほしいというお話がありました(荒井様のお話の詳細はこちらの資料をご覧下さい)。
 お三方のお話の後は、「障害者の雇用を始めるに当たって大事なことは何か」というコーディネーターの加藤様の問いかけに対し、三澤様から、1)障害者雇用の世界は仲間意識が強い、2)同業他業種に関わらず何でも教えてもらえるので、障害者を雇用している企業の話をまず聞くこと、3)障害者が戦力になって働いているところを親会社を含め外部に見てもらうことも重要、4)そうすれば、仕事も自然に来るといったお話がありました。
 また、大本様からは、1)障害者雇用を始めるに当たって、ハローワークの職員に職場を見てもらったら、この仕事は障害者ができるのではないかと教えてくれた、2)障害者の雇用を始めるには、こうした仕事の切り出しが重要といったお話がありました。
 さらに、櫻田様からは、障害者雇用に対する思い込み、先入観をなくすことが必要だというお話があり、荒井様からは、障害者を戦力にするには、福祉と雇用は違うということを認識した上で、福祉と連携することも必要だというお話がありました。

 以上のパネルディスカッションの後は、今度はグループディスカッションということで、セミナーの参加者が5〜6名のグループに分かれ、障害者雇用について日頃抱えている悩みを出し合い、三澤様の講演やパネルディスカッションの内容も踏まえて、その解決策について話し合いました。
 その結果、パネラーに対して、1)障害者の雇用を進めるに当たり、企業の上の方の理解を得るにはどうしたらいいか、2)同じく健常者の理解を得るにはどうしたらいいか、3)障害者の雇用にはどのくらいのコストをかけたらいいか、4)中高年の障害者の採用についてどう考えるか、5)企業として学校教育に望むことは何か、6)障害者が年齢を重ねていくとその家族も含めてサポートが必要になるが、企業としてどこまで関わったらいいかといった質問が出されました。
 これらの質問に対しては、各パネラーやコーディネーターから、1)企業の上の人には、障害者が働いているところを実際に見てもらうことが効果的。また、年2回、現場の実態を説明に行っている、2)自部門で仕事ができるようになった障害者を他部門に異動させている。そうすれば、障害者は戦力になるという声が自然と出て来る、3)障害者の業務拡大については外注している業務を取り込むといいのではないか。外注している費用で受託し、どれだけ効率化できるか考えていく方法もある、4)障害者の採用に当たっては、年齢よりも、その仕事に合っているかどうか、会社が求める能力を持っているかどうかということがポイントになるのではないか、5)学校には職業教育はほどほどにして、学校でしかできないことをやってほしい。例えば、人と協力する力やレジリエンス(弾力性)といった人間力を身に付けさせるようにしてほしい、6)障害者の加齢については、企業だけで対応することはできない。支援機関との連携が必要といった回答がそれぞれありました。

 今回の東北ブロック特別セミナーについては以上です。
 東北ブロックは他のブロックに比べると特例子会社が少ないようですが、最近は、新たに特例子会社を作る動きも出て来ています。
 こうした中で、今回のセミナーにおける他のブロックの特例子会社のお話は、これから障害者を雇用しようとしている東北ブロックの企業の皆様にとっても大いに参考になったのではないでしょうか。