令和元年度上期九州・沖縄ブロック会議が開催されました。
去る6月25日(火)午後2時から、福岡市博多区の八仙閣本店において標記会議が開催されました。
当日はまず最初に栗原会長からあいさつがあり、1)会員の皆様のご支援、ご協力により、厚生労働省からの受託事業も3年目を迎えることができた、2)最近は会員が増えており、正会員だけでも300を超えるようになった、3)これには、厚生労働省からの受託事業を実施したことにより、全重協の名前が周知されたことも影響しているのではないか、4)先の総会で、「公益社団法人全国重度障害者雇用事業所協会」という全重協の正式名称から「重度」という言葉をとって「公益社団法人全国障害者雇用事業所協会」とし、略称も「全重協」から「全障協」に変えることが決まった、5)こうした名称変更は、来年4月から実施するといった話がありました。
栗原会長のあいさつの後は、本部報告ということで、1)厚生労働省からの受託事業として実施している相談コーナーの周知について、会員の皆様にもご協力いただきたい、また、2)会員の皆様ご自身もお気軽に相談コーナーをご利用いただきたい、3)同じく厚生労働省からの受託事業として実施している障害者活躍企業の認証については、この6月から8月末まで申請を受け付けている、4)これまでのブロック会議や都府県支部会議のような地域毎の会員の集まりに加えて、今後は、A型や精神障害者、助成金といった特定のテーマ毎に全国の会員にご参加いただく研究部会を設けることを検討している、5)昨年度は、会員からの寄付が減ってしまったので、今年度は積極的なご寄付をお願いしたいといった話がありました。
また、これに加えて、福岡相談コーナーの相談員でもある安河内理事(株式会社あいの里代表取締役)から、今年度も大分、宮ア、長崎の各県で、会員企業の協力を得て出張セミナーや相談会を行うという話がありました。
本部報告の後は、去る2月7日になくなられた全重協の大山元会長が生前インタビューを受けられた際の模様を収録したDVDの放映が行われました。
その中で、大山元会長が語っておられた「知的障害者はその理解力に合わせて仕事をしてもらえば、集中して仕事をしてくれる。それができないのは周りの段取りが悪いから。」というお話は、最近よく言われている障害者に対する合理的配慮そのものであり、障害者雇用に対する全重協の原点ともいえる考え方ではないでしょうか。
大山元会長のDVD放映の後は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者助成部長の伊達浩二様から「障害者雇用をめぐる最近の動きと障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金等について」と題して講演をしていただきました。
伊達様からは、1)今国会で障害者雇用促進法が改正され、週の所定労働時間が20時間未満の障害者を雇用する事業主に納付金制度に基づく特例給付金を支給することや、障害者の雇用促進等に関する優れた取組を実施する中小事業主を認定する仕組みが設けられることが決まった、また、2)国や地方公共団体における障害者の雇用状況を的確に把握するための措置が講じられることになったといったお話がありました。
また、法改正以外のお話としては、3)一時単年度収支が赤字となっていた納付金財政も最近は黒字に転じている、4)その一方で、納付金制度に基づく各種助成金の認定件数や支給件数は減少している、5)納付金制度に基づく助成金は、事業主が障害者を新たに雇い入れたり、その雇用を継続するために特別な措置を行う場合に、事業主の経済的な負担を軽減し、障害者の雇用の促進と継続を図ることを目的としている、6)納付金制度に基づく助成金としては、施設、設備を設置、整備するための障害者作業施設設置等助成金、介助や相談等を行うための障害者介助等助成金、通勤を容易にするための重度障害者等通勤対策助成金がある、7)平成30年度には、障害者相談窓口担当者の配置助成金や障害者職場実習支援事業が新設された、8)今年度から、支給対象障害者の離職に伴い、新たに障害者を雇用する場合の支給請求期間の延長、雇用継続義務期間の対象障害者の要件緩和、附帯施設の対象の緩和、申請等を事業主以外の者に委任する場合の要件の緩和が行われたといったお話がありましたが、当日は、このほかにも助成金の申請の流れやポイントについて分かりやすく解説された資料等もお配りいただき、全重協の会員にとって関心の高い助成金について大変有意義なお話を伺うことができました(伊達様のお話の詳細についてはこちらの資料をご覧下さい)。
伊達様のご講演の後は、今度は、NPO法人M’sハートフル代表の玉利一道様から「若者、高齢者、精神障害者の自殺防止活動を通じて」というテーマでご講演をいただきました。
玉利様からは、1)元々宮崎県庁で障害者の就労支援を3年間担当した、2)その後、長崎県庁に出向し、NPO法人によるA型事業所の開設支援を担当した際に、全重協九州・沖縄ブロックの森田ブロック長(長崎基準寝具有限会社代表取締役)と出会った、3)自殺防止には安心して交流できる場所(居場所)が必要といったお話がありましたが、「居場所」を作るということは企業において障害者の雇用を継続する上でも大変重要なことではないでしょうか(玉利様のお話の詳細についてはこちらの資料をご覧下さい)。
今回のブロック会議については以上ですが、ブロック会議の翌日には、会議参加者が、今回のブロック会議にオブザーバーとしてご参加いただいた西部ガス絆結株式会社(西部ガスの特例子会社)を見学させていただきました。
同社には、コピー、デザイン、印刷、製本、スキャニング、データ入力、CAD,名刺作成等の業務を行う千代事業所(コピーセンタ絆結)と就労移行支援や就労継続支援B型を行う春日事業所(ワークオフィス絆結)があり、当日見学させていただいた千代事業所では、入口が大きく開放された明るい雰囲気の職場環境の中で9名の障害者(精神2名、発達4名、知的2名、精神と身体の重複障害1名)の方々が元気に働いておられました。
当日は、まず最初に、同社代表取締役社長の船越哲朗様から概況説明がありましたが、その際、1)全重協の大山元会長の話を聞いたことが障害者雇用に取り組むきっかけとなった、2)同社では、障害者であるか健常者であるかは関係ない。○○が得意な人と○○が苦手な人がいてお互いにサポートしているだけ、3)同社の組織は、一般的な特例子会社のようなピラミッド型ではなく、社員が得意なことを生かし、苦手なことを補い合う「網の目」の関係となっている、4)同社は設立当初から黒字となっており、社員全員で稼いで税金を納めている、5)西部ガスグループ以外からの売上は50%近くになっているが、今年度は、これを50%以上にしたい、6)超高齢化社会に向けて働き手を増やし、税収を増やすことが国を助ける最善策、7)障害者や難病患者の当事者であることが自分たちの強みと売り、8)企業や一般の方々が障害者や難病患者と直接関わることができ、新たな気付きや正しい理解ができる交流スポットとなることを目指している、9)障害者の仕事だからといって質が落ちることは許されない。一般企業に負けないよう、品質は厳しく管理しているといったように、全重協の会員企業にとっても大変参考になる示唆に富んだお話を伺うことができました(船越様のお話の詳細についてはこちらの資料をご覧下さい)。
また、以上の船越様のお話に加え、当日は当事者である大蔵健司様からも補足説明があり、その際、1)社長には敢えてマネジメントを放棄してもらっているが、このことが自分たちの仕事をやりやすくしている、2)客が来たらまずお茶を出す。これにより、客とのコミュニケーションを深め、そのニーズを把握している、3)毎日出勤して仕事をすることは正直苦しいが、自分たちだけで仕事ができる自己決定感や達成感が仕事に対するモチベーションとなっているといったように、当事者ならではのお話もありました。
同社の見学については以上ですが、同社は、上述した千代事業所や春日事業所の業務に加えて、メンタル面の不調等で休業した他の企業の社員のリワーク支援や障害者雇用のサポート・コンサルティング等の事業も行っているそうですが、こうした同社の取組は、全重協の会員である特例子会社にも大変参考になるのではないでしょうか。
また、障害者であるか健常者であるかにかかわらず、一人ひとりの社員が自分の得意なことを生かし、苦手なことはお互いにサポートし合うという同社の働き方は、理想的な障害者雇用の在り方の一つであるといえるのではないでしょうか。